風の通る道 by mamaneko

人や音楽や本は、出合うべきときに出会うね。本当に不思議だけれど。風のように、波のように。風の通る道。そんな話を少しずつ。

「伊藤銀次&杉真理 トライアングルソングス」1日だけの、奇跡のようなライブ

「ステージに、こうして並ぶのも、何十年ぶり?」 伊藤銀次さんが言い、佐野元春さんが、ウンウンウンと笑顔で頷く……。

こういうの、最近、弱い。じーんときちゃう。若い頃から一緒にやってきて、もう●年だね、っていう、仲間の間に流れる、そんな空気感。

そして、杉さんとも並び、3人で歌う「A面で恋をして」。奇跡のような光景を目にしていることがうれしくて、リズムをとるのも忘れて、じっと見つめて聴いていました。

 

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さて、「伊藤銀次&杉真理トライアングルソングス」(atビルボード東京)。

ナイアガラトライアングル vol.2』40周年を記念してのライブで、途中から佐野さんがゲスト出演した。冒頭のやりとりは、ピアノを弾きながら歌った「マンハッタンブリッヂにたたずんで」「Bye Bye C-Boy」のあと、佐野さんがステージ前方に移動して、銀次さんと杉さんと並ぶ準備をしていたときの一コマ。この並びは、まさか、まさか……と思ったら、はい、3人が並んで歌う「A面で恋をして」だったのでした。

 

途中、佐野さんが歌う場面でちょっとハプニングが……。

曲が終わったとき、右手を、ピストルの真似をするときの形にして、自分のこめかみにあてて、ちょっと悔しそうな、おれもマダマダだな…みたいな苦笑い。

その表情を見た杉さんが「大丈夫だよ。気にすんな」とでも言うような視線と笑顔を送っていて、その雰囲気がとてもよかった。このときのふたりの表情、一生忘れないかも。考えてみたら、杉さんと佐野さんは、10代の頃、同じポプコンに出場していて、その頃からのつきあいだから、45年以上になるのか。。

 

「Down Town」から始まった昨日のライブ。「夢見る渚」や「幸せにさよなら」「Crying All Night Long」「スピーチバルーン」など、銀次さんと杉さんがふたりで歌ったステージもよかったし、さらにそこに佐野さんが加わって、『ナイアガラ・トライアングル Vol.2』の曲を3人で演奏したとき、みんな、本当に楽しそうだった。

 

ステージの中央にキーボードがあって、そこに座った佐野さん。「マンハッタンブリッヂにたたずんで」なんだけど、ん? 少し違う印象……と思っていたら、曲が終わったとき、銀次さんが、「今日はピアノなんだね」と、あのやさしい口調で話しかける。「いつもは、ギターじゃない?」

すると佐野さんもやさしく微笑んで、「うん、そうだね。でも、ここのハコには、ピアノの音が合ってるね」と、さらりと、いつもの口調で答えていた。

続いて、「Bye Bye C-Boy」。銀次さんと杉さんは、いつもの感じ(^^)だったけど、佐野さんがとてもおだやかな、やさしい感じで、少年のように楽しそうで、そんな佐野さんを見ていて、切ないくらいに幸せな気持ちになった。

 

幸せ、と言えば……キーボードの細井豊さん!

銀次さんのライブでもお馴染みの細井さんが、昨日のステージでも参加していた。踊るキーボーディスト(^^♪ にこにこ笑いながら、ウンウンウンウンと頷くようにリズムをとる時があって、その感じがとても好き。彼の弾く姿、奏でる音。とっても幸せな気持ちになる。いいんだよなぁ、細井さん。

 

アンコールは「君は天然色」と「彼女はデリケート」。

君は天然色」は銀次さんと杉さんのふたりで。私はこの曲のリズムパターンが大好きで、その要となるドラムのリズムを、からだで一緒に感じられると、本当に気持ちいい。最高だね!という気分になる。

 

そして、佐野さんが再びステージに出てきたとき、ギターを持ったり、歌う準備をしながら、「挽回する(笑)」とつぶやいた。マイクに向かって言ったわけではなくて、つぶやいたら、マイクが拾っちゃったという感じだったけど、杉さんも銀次さんもにこにこ、会場からは拍手。いつものクールな感じはぜんぜんなくて。でも、素の佐野さんはこういう感じの人なのかもしれないね。ほんとに魅力的な人だなぁ。

 

「彼女はデリケート」では、バンドのメンバーも、銀次さん、杉さん、佐野さんの3人も、そして会場も、文字通り、ひとつになっていた。

会場には、1981年、82年……。あの頃、高校生や大学生だったと思われる年代の人が多かった。知らない人同士だけど、うん、なんか、いろんなことがあったね、同じ年月を経てきたね、でも今日ここで、みんなで、『ナイアガラ・トライアングル』の曲が聴けて、よかったじゃん、いろいろあるけどさ、大丈夫だよ……とでもいうような感情だろうか。不思議なあたたかさがあった。

 

伊藤銀次杉真理 トライアングル・ソングズ。

大きなホールやアリーナではなく、(ライブハウスとしたら、ちょっとラグジュアリーだけど^^;)ビルボード東京というサイズ感がちょうどよかった気がする。

1日だけのスペシャルライブ。楽しかった。ありがとう。