風の通る道 by mamaneko

人や音楽や本は、出合うべきときに出会うね。本当に不思議だけれど。風のように、波のように。風の通る道。そんな話を少しずつ。

いい音楽とは「歌い継がれていく音楽」なんだね。ベルウッド・レコード50周年記念コンサート

 

昨夜の「ベルウッド・レコード50周年記念コンサート」を観ていて、思い出したのが、映画「エコー・イン・ザ・キャニオン」だった。

この映画の舞台は、60年代~70年代にかけて、数多くの若き(当時)ミュージシャンたちが暮らし、お互いに刺激しあって、ウェストコースト・ロックというジャンルをつくりあげた伝説の場所「ローレル・キャニオン」。

ボブ・ディランの息子、ジェイコブ・ディランがホスト役となり、この偉大な時代をつくってきたミュージシャンにインタビューしたり、ジェイコブと同世代のミュージシャンたちによって、数々の名曲を歌う…などしていた。

 

昨日のコンサートでは、高田渡さんの息子さんである高田漣さんがホスト役となり、進行をすすめ、ほとんどの曲でギターやスチールギターを弾き、ミュージシャンの歌を支えていた。

エコー・イン・ザ・キャニオンではボブ・ディランの息子が、昨夜のベルウッド50周年記念コンサートでは、高田渡さんの息子さんが……というところも、この両者が重なって見えた理由かと思う。

 

ベルウッド・レコードが発足したのは1972年。当時は無名でも、いい音楽をつくり歌っている若きミュージシャンたちを発掘し、良質なレコーディング環境を提供し、アルバムを出していった。

レコード会社だから「地域や場所」ではないけど、まぎれもなく、ベルウッドは日本のローレルキャニオンだったんだなと思った。



いま、亡くなった友人・下村誠さん(音楽ライター、ミュージシャン」の本を作ろうとしているのだけど、彼が書いたミュージシャンは50近くいて、中には名前は知ってるけど、ちゃんと聴いたことがない…という人も多かった。その多くが(いや、全部かも)ベルウッド、あるいは、URCからレコードを出している。

 

本への転載をお願いする際、まったく聴いたことがないというのも失礼な気がしていた。YouTubeがあるから、それを聴けばいいようなもんだけど、なんだかそれだとダメな気がしていたとき、ベルウッド50周年記念コンサートが開催されるという情報が出て、「行かなきゃ!」と思って、チケットを申し込んだ。

 

そんな意味もあったのだけど、行って、本当によかった。

演奏される曲は、自分がベルウッドやURCで出した最初の頃の歌、あるいは、すでに亡くなってしまって、この日のコンサートに出演できなかったミュージシャンの歌を歌う人も多かった。

 

でも、ただの、「昔の音楽を演奏して懐かしむ」コンサートではなかったからだ。

バックミュージシャンを務めたのは、高田渡さんの息子さん、高田漣さんと同世代のミュージシャンたちだった。ベルウッドの音楽を聴いて、憧れて、ミュージシャンになったという森山直太朗さんも出演していた。

 

歌は、歌い継がれる。

 

いい歌とは、それは大勢の支持を集めたヒット曲だとか、商業的なヒット曲ではないとか関係なく、そして、誰かが……それが著名なミュージシャンでも、普通のアマチュアミュージシャンでも……誰かが、「歌いたい」と思ってカバーし、歌い継いでいく歌なんだろうな。

昨夜、歌い継がれた歌たちは、きっとずっと残っていく。

個人的には、やっぱり、中川五郎さんが歌った「ミスター・ボー・ジャングル」がよかった。

下村さんはこの曲をライブでよく歌っていた。

 

 

私の頭の中では、五郎さんの声に、下村さんの声が重なって聴こえてきて、泣きそうだった。

あとは、はちみつぱいの「堀の上で」、六文銭の「旅立ちの歌」がよかったな。「旅立ちの歌」をコンサート最後の曲にセットしたというのは、やっぱり、この歌詞があるからだろうと思う。

懐かしむのではなく、これからのことが大事という――。

 

さぁ 今 宇宙に

さぁ 今 未来に

飛んでいけ