風の通る道 by mamaneko

人や音楽や本は、出合うべきときに出会うね。本当に不思議だけれど。風のように、波のように。風の通る道。そんな話を少しずつ。

軽やかな嫉妬

(以前つかっていたブログが閉じてしまうので、こちらにお引っ越し。書いたのは2021年1月30日)

 

「嫉妬? しますよ」

 お正月、「箱根駅伝」の放送中にかかるCMで流れる「大人エレベーター」シリーズ(サッポロビール)。俳優の妻夫木聡さんがゲストに「大人って……」などと問いかけるアレ。そのなかに、坂本龍一さんがゲストとして登場する回があった。

 妻夫木さんが「嫉妬すること、ありますか」と問いかけると、坂本龍一さんは、はにかむようなあの笑顔で、軽やかに、「嫉妬? しますよ」と答えていた。嫉妬の対象は、確か、他のミュージシャンだったか、才能だったか…。そのあとの会話のなかで、「ボクは弱い人間なんです」ともおっしゃる。

 坂本龍一さんって書くと長いので、きょーじゅにしようw

 きょーじゅ。CMでの会話によると、とても嫉妬するらしい。

 「そうか、きょーじゅほどの人でも嫉妬するんだ」と驚くような、むしろ逆に、納得もするような。

 「嫉妬します」と軽やかに言えること。あぁ、なんか、いいなー。そっか、それなら、私だって、嫉妬してもいいんだ。きょーじゅの笑顔を見ながら、安心したのでした。

 というのも、昨年、特に春以降ずっと、苦しかった。「根本的な考え方や理想が異なると、こんなにしんどいんだね」という感じかなぁ。

 ネガティブ感情に気づくのが遅くて、気がついたら、あらまぁ、コップ一杯たまってたわ…(汗)という感じで、しかし、そこから抜け出すことが責任上不可能で、がんじがらめになってしまった。それを何とか、ビューンと吹き飛ばしてしまいたい~と思うのに、吹き飛ばせず、悶々…。そうなったときに、SNSなどでつながる人たちの〝成果〟を見るのが、つらくなってきてしまった。

 実は、子どもの頃、父から何度も何度も、何度も、聞かされた話がある。

 「友だちが喜んでいたら、一緒に喜んであげなさい。友だちが悲しんでいたら、一緒に悲しんであげなさい。決して、人をうらやましいと思ったり、ねたんだりしてはいけないよ」

 というもの。

 父は、父が9歳の頃にお父さんを亡くしていて、3人兄弟の一番上のお兄さんが働いて生計を支え(父は末っ子)、父自身も中学を卒業してすぐに地元の税務署にはいり、ずーっと仕事をしてきた人。

 貧乏で貧乏で、公務員なんていう学歴社会(中卒だから、もちろんノンキャリ)のなかで、相当に苦労しただろう、嫌な思いもあっただろうと思うのに、あの純粋さ、強さ、包容力。本当にすごい人だった。

 この話を一番よく聞いたのは小学生の頃。

 小学生のピュアな頃(笑)に繰り返し聞いた言葉だったから、案外、それなりに身についたような気がする。それを理想、目標にして、父ほどの生き方はできない部分は、たとえば、「ネガティブな感情はしかたない。でもそれを転じて、プラスのチカラに変えるんだ」と、わたし流にアレンジして、なんとかうまくやってきていたのにね……。

 で、昨年の話に戻る。

 自分がしんどくなったときに、友人たちの〝成果〟を読むのがつらくなってしまった。 わぁ、よかった! 私もうれしい……という思いはあるものの、一方で、うらやましく思っている自分もいて、父の言葉を実行できない自分がイヤになってきた。

 そのうちに、「私には無理かも」「そんな才能、ないな…」と弱気になって、弱気の雪だるま状態(笑)。でも、この雪だるまができたおかげで、自分が本当にやりたいこと、大切にしたいことも見えてきた。わかったのなら、前に進まなくちゃ。

 すぐに行動できないのがしんどいんだけど(決めたら、あとさき考えずに行動してしまうのが、いつもの私のパターンなのに)、とにかく、初心に返るための一歩を踏み出そうとしたら、昔の仕事仲間から便りが届いたり、大切な友人が亡くなって、気づくことがあったり……(前回のブログ「初心に返る」に書いたあたり)。

 そして、お正月の「大人エレベーター」のCM。(やっと、ここに戻ってきた(笑))

 そっか、私も「うらやましいと思っちゃった」「嫉妬? しますよ」って、軽やかに思えばいいんだな。そう思ったら、気が楽になった。

 そういう感情を抱いてはいけないと思うから、そこに罪悪感を感じてしまう。感情がかえって重くなる。案外、長い間、自分をしばりつけていたのかもしれない。いいんだよ。うらやましいなと思ったって。

 お父さん、ごめん(笑)。きょーじゅ流に変更します。

 ネガティブを受け止めて、抱きしめて「おつかれ!」と言ってあげて解き放ち、さぁ、そこからプラスに転じなくちゃね。とはいえ、長年のクセというのはなかなか抜けきれず、この1週間くらい、またちょっと弱気とコンプレックスに凹んでいた。

 そこに、友人のブログ。やっぱり、必要なときに、必要なものが、目の前に現われる。キャッチできてよかった。ありがとう。また迷走することがあるかもしれないけど、とりあえず、迷ったら戻ってくる場所は自分のなかに確保した。よしよし。